SozoWorks|調査レポート

シート・繊維製品の生産現場におけるAI活用

掲載事例・出典一覧

2026年10月4日|掲載18事例、補足1事例、出典33件

調査本文

事例の採否は対象業務を基準とした。材料の新規用途探索、研究開発品の検査、書面監査、外構提案書、事業部内解析、金属加工の自動化は対象外とした。東レの外観検査と逆紙管検知は同じ行に併記している。

A. 外観検査・逆紙管検知(8事例)

パターンAの事例と確認できた範囲
業界・事例誰が行う、どんな業務かAIを含む処理と、人の役割段階・効果
不織布
東洋紡エムシー
スパンボンド不織布製造ラインの検品。
検査装置が欠点を検出 → 欠点画像を作業員が確認 → 欠点記録を作成。
AIが検出画像から欠点候補を絞り込み、記録を自動作成。作業員は候補を最終確認する。2024年8月運用開始。一部銘柄で確認件数96%削減(実績)。[1][2]
養生テープ
ダイヤテックス
ロールtoロール生産ラインのラミネート工程での外観検査。
欠点探知機が検出 → 作業員が経験と目測で良否を判断。
AI外観検査装置「TESRAY Rシリーズ」が異常部だけを検出し、画像と座標を表示。色違いの多品種を1システムで検査。追加学習はラインを止めずにオフライン装置で行う。2022年本格稼働。導入会社社長のコメントで欠点反応総数165箇所→3箇所。測定条件の記載なし。[3][4]
化学
三井化学
シート状製品の外観検査。
カメラで異物を監視 → アラーム → 担当者が現場で製品を解体して確認。
ディープラーニングのモデルが画像から良否を判定。現場の熟練技術者に密着して良否判定の指導を受け、学習データを作成。2019年夏から約1年で現場実装。外観検査時間の8割削減(提供会社の事例)。測定方法の記載なし。[5][6]
合成繊維
東レ 石川工場
原糸の梱包前の外観検査(毛羽・汚れ)と、製糸工程の紙管の逆セット確認。
2019年時点でボビンと紙管を1日1万5,000個、担当7人が交代で全量目視。
複数のカメラで撮影した画像をAIが判定。逆紙管はカメラとAIで検知。担当者は検知品のみ再検査する設計。2020年12月に外観検査へAI判定を導入。品種によっては自動化を実現。逆紙管検知は「効率的にトラブルを回避できるようになった」(定性)。[7][8][9][10]
毛織物
国島
反物の検反。
照明・カメラ位置を変えて撮影 → 傷の有無と位置を学習 → 自動判定。
8,000枚以上のスーツ用ウール生地画像のデータベースから傷の特徴を学習した自動検査装置。大学・公設試験研究機関との共同研究。2022〜2024年度の研究プロジェクトを経て自社工場へ導入・運用。疵検出の精度向上と検査の安定化(定性)。[11][12][13]
既製服の検反
大阪谷町既製服協同組合
紳士服メーカー向けの反物の検反。検反員は10年以上のキャリアを持ち、育成に時間がかかる。画像データ特化型のAI外観検査を工場に導入し、傷の候補を提示する検証を開始。2023年4月時点で検証開始。効果の記載なし。[14]
自動車シート
トヨタ紡織 猿投工場
シート組み立てラインでの作業員の動きの確認と、完成品のシワ検査。AIとカメラで作業員の動きを確認し、完成品のシワをチェックする。2024年12月に自動化ラインを報道公開。導入時期・効果の数値は記載なし。[15][16]

B. 品質判定・作業支援(3事例)

パターンBの事例と確認できた範囲
業界・事例誰が行う、どんな業務かAIを含む処理と、人の役割段階・効果
染色加工
艶金
染色した生地の色味の検査。
熟練者が合否を判断 → 不合格なら染め直し。
測色データを学習したAIが熟練者に近い判定を示す。若手作業員の補助として使う。2024年6月資料で判断補助としての活用を確認。判定結果は5秒以内に表示。若手だけでの判断とシフト編成が容易に。染め直し要求は減少傾向(減少率の記載なし)。完全自動化の実施は未確認。[18][19][30]
化学
三井化学
製品の形状安定性の全数検査。
3次元形状を人が見て合否判定 → 合格品のみ出荷。
目視で用いていた3次元形状データを数値化し、機械学習で合否を判定。実施済み。検査工数の大幅な削減と一律の判定基準の確立(定性)。時期の記載なし。[6]
化学
旭化成
製造現場の作業前の危険予知。
想定されるリスクを洗い出し → 対策を決めて作業。
過去事例のデータを読み込ませた生成AIが、リスクと対応策の洗い出しを支援。2024年12月に活用開始を公表。経験の浅い従業員でも抜け漏れなく洗い出せる(定性)。[20]

C. 設備監視・診断支援(5事例)

パターンCの事例と確認できた範囲
業界・事例誰が行う、どんな業務かAIを含む処理と、人の役割段階・効果
化学
花王 和歌山工場
バッチプロセスの運転監視。
数名のオペレータが約30設備・約800品種を監視 → 異常時に対処。
過去の運転データから正常パターンを学習し、ずれを異常度で通知。現場がモデルを作成・維持し、通知後の対応を標準ワークフロー化。2020年12月本格稼働。検証でオペレータの発見より約5時間前に検知。導入後、対象設備のトラブル件数半減、6設備52モデル(2023年発表資料)。[21][22]
化学
JFEケミカル 東日本製造所
蒸留塔の熱交換器の閉塞への対応。
センサーデータを表計算で解析 → 詰まりは事後対応。
流量・温度・圧力の時系列データを機械学習で分析し異常度スコアを示す。感度の異なる3つのモデルで「注意」の段階を設ける。2023年導入。洗浄停止のタイミングが明確化し生産調整が容易に(定性)。[23]
化学
三菱ケミカル 東海事業所
生産設備の点検で動力設備・制御装置の故障を発見した際の原因特定と対策。図面・保全記録・運転履歴をナレッジグラフ化し、生成AIのエージェントが原因と対策を提示する。設備管理技術者が判断に使う。2025年12月に共同検証を開始。熟練技術者と同等以上の速さと正確さは検証の目標で、効果は未公表。[24]
毛織物
国島
織機の保全。油切れや部品の劣化などの異常を、経験で察知してきた。工場の織機の動作音を収集し、時空間解析で得た特徴からAIが異常や状態を検知するモデルを学習・評価。研究開発段階(2022〜2024年度)。技術評価の精度のみで、業務効果の記載なし。[25][11]
自動車内装部品
トヨタ紡織
国内外約100工場の設備稼働の把握と予防保全。各拠点をネットワークでつなぎ、ものづくり革新センターが稼働を24時間監視。不具合の兆候を検知して拠点に発報し、AIで問題解決の方法を導く計画。2020年2月報道の計画。2020年度から国内工場で導入開始、2030年に全工場をネットワーク化する方針。実績は未確認。[26][27]

D. 生産計画(2事例)

パターンDの事例と確認できた範囲
業界・事例誰が行う、どんな業務かAIを含む処理と、人の役割段階・効果
合成繊維
東レ 石川工場
ポリエステル繊維の生産計画の作成。
熟練者が丸1日かけて立案。
数理最適化技術で生産計画を自動生成するシステム。導入済み(2026年5月報道)。効果は公開部分に記載なし。[29]
化学
住友化学 千葉工場
合成樹脂の生産計画の立案・変更と、エネルギー管理。
部門ごとに判断が分かれ、熟練者が手作業で調整。
AIが生産とエネルギーの計画に調整案を提示し、熟練者に代わって迅速に立案。契約電力の上限超過の回避や廃熱の共有を考慮。2025年3月から実工場で検証。事前検証で一定量の削減を確認(数値非公表)。[28]

補足:資料の時点と、AIを使わない省力化

艶金の運用段階

掲載日不明の中部経済産業局資料は、自動色目チェックシステムを試験運用と記載している。2024年6月の日本公庫資料では判断補助としての活用を報告しており、本文にはこの運用・効果を反映した。同資料の2024年末までの完全自動化は当時の方針で、実施を確認した情報ではない。[18][19][30]

画像認識・機械化・設備監視による省力化

土屋合成は、目視検査の負担の偏りと合否基準のばらつきに対し、画像認識を用いた検査機などを導入した。自動取り出し・計量・箱詰め、成形機の稼働監視も組み合わせ、10人以上を他工程へ回したと日本公庫の資料は報告している。AI使用の記載はなく、複数施策による省力化の事例として扱う。[30]

トヨタ紡織の自動縫製装置も、熟練作業者の手の感覚をデータ化する技術として紹介され、AI使用の記載はない。本文で扱うシワ検査とは別の取り組みである。[17]

背景資料

共和レザーの長期ビジョンは合成皮革製造の生産性向上、経済産業省の繊維ビジョンは技能継承と生産性、プラントのAI事例集は設備の高経年化・労働力不足を扱う資料として参照した。[33][31][32]

出典

番号は調査本文と共通。本文中の番号は出典番号を示す。末尾の出典一覧を開くと、各原典を参照できる。

出典一覧を開く
  1. 東洋紡エムシー「スパンボンド製造工程にAIシステム導入、検品件数が96%削減」ニュースリリース、2026年1月16日。資料を開く導入会社の発表。運用開始時期、96%削減の測定条件(脚注)、仕組み(欠点候補の絞り込み、記録の自動作成、数十種類のモデル、再学習機能)を確認。
  2. 東洋紡・東洋紡エムシー「スパンボンド不織布の検品工程にJR西日本開発『AI検品ソリューション』を導入」ニュースリリース、2023年11月7日。資料を開く年間1,000時間以上削減の見込み、2021年からの実証実験、岩国サイトでの採用。
  3. ロビット「ロビット、繊維工業品の検査自動化を進める『TESRAY Rシリーズ』の提供を開始。ダイヤテックス社の実生産ラインで検査精度100%を達成。」PR TIMES、2023年6月28日。資料を開く提供会社の発表。導入前の過検出、納入と本格稼働の時期、運用(多品種、オフライン追加学習)、導入会社社長のコメント(165箇所→3箇所)。
  4. ロビット「ロビットのAI外観検査ソリューション『TESRAY』が国内養生テープトップシェアのダイヤテックスに採用。」PR TIMES、2021年2月18日。資料を開くPOCの結果(異常部検出99%超、正常部過検出0%)。
  5. MathWorks「三井化学、TensorFlowとMATLABを使用してAI・自動化技術を現場展開」ユーザー事例。資料を開く提供会社の事例。「外観検査時間の8割削減」、現場実装の方法。
  6. MONOist「『現場で使えるAI』、三井化学はどうやって実現したのか」(PR記事、提供:MathWorks Japan)、2020年12月16日。資料を開く誤検知のアラームと運転員の負担、2019年夏から約1年の開発、熟練技術者による良否判定の指導、3次元形状検査の数値化と一律の判定基準。
  7. 東レ公式note「北陸最大級のメガソーラーも完成!サステナブル対応が進む東レ石川工場」2025年3月24日。資料を開く導入会社の発信。カメラとAIによる紙管異常検知の運用、自動外観検査AIの導入。
  8. 繊研新聞「《スマートな持続可能を目指す東レ石川工場㊦》AI活用で高度化 全員でDX」2024年3月7日。資料を開く公開部分を確認。逆紙管検知装置の導入と効果(定性)、外観検査の自動化と対象品種の拡大。
  9. 日本経済新聞「東レ、石川の原糸工場にAI導入 人材育成難で検査自動化」2019年8月6日。資料を開く無料表示部分を確認。1日1万5,000個・担当7人の全量目視、2021年初めまでの導入計画、検知品の自動分別。
  10. 日本経済新聞「東レ、製品の外観不良をAIで識別 熟練工の腕並みに」2021年4月26日。資料を開く無料表示部分を確認。2020年12月からの外観検査へのAI判定導入。
  11. 科学技術交流財団 知の拠点あいち重点研究プロジェクトIV期 D5「繊維産業に於けるAI自動検査システムの構築に関する研究開発」プロジェクトページ。資料を開く公的機関。研究の概要、参加機関、国島の今後の展開。
  12. 同プロジェクト D5-1「AIによる自動検査システムに関する研究開発」成果概要(PDF)。資料を開く自動検反装置の試作と学習の方法。
  13. 愛知県「知の拠点あいち重点研究プロジェクトIV期 成果普及セミナー『音と画像で見守る繊維工場』の参加者を募集します」2025年9月2日(元ページは閲覧不可。インターネットアーカイブの2026年4月15日保存版と添付チラシで確認)。資料を開く8,000枚以上の画像データベース、国島の自社工場への導入・運用と疵検出の精度向上・検査の安定化(講演概要)。
  14. クロスコンパス「服製造業、技術継承のサポートに人工知能(AI)を活用 外観検査ソリューションを反物検品に導入」note、2023年4月8日。資料を開く提供会社の発信。大阪谷町既製服協同組合での検証開始、検反員のキャリアと育成の課題。
  15. 日本経済新聞「トヨタ紡織、車シートの縫製や検査を自動化 ライン公開」2024年12月2日。資料を開く無料表示部分を確認。AIとカメラによる作業員の動きの確認と完成品のシワチェック。
  16. 日刊自動車新聞「トヨタ紡織、シート生産の自動化ライン公開 2030年に加工費半減へ」2024年12月4日。資料を開く見出しとリード文を確認。
  17. トヨタ紡織 Team Breakthrough「リアルハプティクス技術を活用した自動縫製装置開発」2025年3月7日。資料を開く導入会社の発信。熟練作業者の手の感覚のデータ化。AIの記載はない。
  18. 経済産業省 中部経済産業局「株式会社艶金 - 企業の取組事例」中部DX推進コミュニティ。資料を開く公的機関。掲載日は不明。「試験運用」と記載。本文の運用・効果は、時点の明らかな2024年6月の資料[30]を併せて確認した。
  19. 日本経済新聞「中小『職人の技』データ化 艶金、AIが若手指導」2022年3月16日。資料を開く無料表示部分を確認。熟練社員のノウハウを分析しAIが若手を指導するシステム。
  20. 旭化成「生成AIを新規用途探索の自動化や製造現場の技術伝承において活用開始」ニュースリリース、2024年12月9日。資料を開く導入会社の発表。危険予知への生成AI活用、熟練社員の退職によるノウハウ継承の課題。
  21. 花王 田村仁「先進的AI活用によるバッチプロセス異常予兆検知」第16回レスポンシブル・ケア大賞発表資料(日本化学工業協会掲載PDF)。資料を開く導入会社の発表。約800品種・約30設備、年間平均約50件のトラブル(p.8–9)、約5時間前の検知(p.16)、検知事例とトラブル件数半減、6設備52モデル(p.17–24)。
  22. アズビル「花王株式会社 和歌山工場:工業分野の納入事例」(2021年9月掲載)。資料を開く提供会社の事例。導入経緯(2020年2月PoC〜12月本格稼働)、オペレータの心理的負担、現場によるモデル作成と標準ワークフロー。
  23. ブレインズテクノロジー「JFEケミカル株式会社様:Impulse導入事例」。資料を開く提供会社の事例。事後保全からの転換、2021年のトラブル後のPoC、2023年導入、3つの学習モデル、担当者の発言(定性効果)。
  24. 日立製作所「日立と三菱ケミカルが協創、化学プラントにおける設備管理業務のDXに向けて、『HMAX Industry』のAIエージェントを用いたトラブルシューティングアシストの共同検証を開始」ニュースリリース、2025年12月24日。資料を開く提供会社の発表。ナレッジグラフ化、読み取る情報の種類、検証の目標、今後の展開。
  25. 知の拠点あいち重点研究プロジェクトIV期 D5-2「織機の音と異常検知システムに関する研究開発」成果概要(PDF)。資料を開く公的機関。動作音の時空間解析と異常検知モデルの学習・評価(評価実験中)。
  26. ニュースイッチ(日刊工業新聞社)「トヨタ紡織、IoT&AI導入で国内外100工場をスマート化」2020年2月29日。資料を開く報道。計画の内容とスケジュール。
  27. トヨタ紡織「ものづくり革新センターを新設」ニュースリリース、2018年11月9日。資料を開く導入会社の発表。センターの機能(設備トラブル・品質の予兆管理)。
  28. 日立製作所「日立と住友化学、AIを活用し、エネルギー消費の低減・最適化を図る生産計画の自動立案システムの実用化に向け、実工場での検証を開始」ニュースリリース、2025年3月27日。資料を開く提供会社の発表。部門間の課題、熟練者の手作業と属人化、事前検証の結果(数値非公表)、検証開始時期。
  29. 日刊工業新聞「東レ、ポリ繊維の生産計画を自動生成 石川工場に導入」2026年5月1日。資料を開く公開部分(リード文)を確認。熟練者が丸1日かけていた計画作成、数理最適化による自動生成。
  30. 日本政策金融公庫総合研究所『日本公庫総研レポート No.2024-2 省力化投資で人手不足に対応する中小製造業』2024年6月。資料を開く公的機関による経営者への聞き取り調査(2023年12月〜2024年2月)。土屋合成は誌面p.12–15。艶金は誌面p.20–23、特にp.22の約2,000件の学習・5秒以内の判定表示、p.23の判断補助としての活用・若手の判断・染め直し要求の減少傾向を確認。2024年末までの完全自動化は当時の方針であり、実施確認ではない。
  31. 経済産業省 産業構造審議会 製造産業分科会 繊維産業小委員会「2030年に向けた繊維産業の展望(繊維ビジョン)」2022年5月18日。資料を開く公的機関。担い手不足、技術と機械保守ノウハウの伝承、限られた人材での生産性向上。
  32. 経済産業省「プラントにおける先進的AI事例集(案)」産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 高圧ガス小委員会資料、2020年11月17日(元URLは閲覧不可。インターネットアーカイブの2025年7月30日保存版で確認)。資料を開く公的機関。設備の高経年化と労働力不足、熟練技術者のノウハウ継承、突発的な運転停止の防止(総論)。
  33. 共和レザー「長期ビジョン 兼 決算概要説明 2024年3月期」2024年5月27日(PDF)。資料を開く当事者の会社のIR資料。国内既存工場の生産性向上、老朽設備の更新(p.23–24)。